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アキバタマビ21 『□と□(シカクトシカク)』

11月2日(土)〜12月8日(日)

この展示は、「寄せ集めのグループ(a pick-up group)」によってつくられた。もともとは、互いによく知らなかった間柄である。それぞれに力のあるつくり手たちだから、各自の出品だけで終わることだってできたはずだ。けれども僕は、自分の作品展示だけを終えて「ハイ、サヨウナラ」という風な、ありがちなルーティンワークにしたくなかった。だから負担を覚悟のうえで、若きアーティストたちに幾度にもわたって集まってもらい、互いの言葉を重ねることにした。展示タイトルは、長い話し合いの末、〈□と□〉に決まった。読み方もすぐにはわからないし、穴埋め問題のようにも見える。だから、このタイトルを見たときに出る咄嗟の反応は、「は?」「なにこれ?」「意味不明!」というものかもしれない。その意味では、この時代に顕著な「わからないこと(the unfathomable)」を象徴するようなタイトルだ。実は、このタイトルを決めた僕らにだって、明確な答えがあるわけではない。長期的な「危機(crisis)」に瀕していることの自覚された社会では、確固たる答えを、専門家を含めた誰もが知り得ないということが、以前にも増してあきらかになってゆく。そこでは、自分の応えを、自分の言葉と感性でつくりだすことが求められるだろう。そのなかにあって、アートは、同時代にどのように触れ、なにを表現し、担ってゆくのだろうか。表現の世界はこれまで、ある種の「過剰さ(excessiveness)」によって彩られてきたように思う。不快さや破壊を含め、社会や人びとの心に苛烈な揺さぶりをかける力が、執拗に求められ、勇ましく称賛された。だがまたそうした「過剰さ」は、繰り返されるうちに、それ自身がひとつの陳腐さに行きつくという、虚しい宿命をはらんでもいたように思う。いま、そのような時代の末期において、ここに集まる作家たちはなにを想うのか。そして彼女/彼らの表現は、なにを伝えてくれるのだろうか。今回の企画はまた、本年度をもって募集停止の決まった造形表現学部の卒業生たちによる展示でもある。昼間に働きながら、あるいは家庭を持ち子育てしながら通う「学生」の多かったこの夜間学部の廃止の決定が、ひとつの時代の終わりに直面した際の人間の判断を象徴しているように、僕には思える。 中村寛(文化人類学者・人間学工房の呼びかけ人・多摩美術大学准教授)

2013年11月2日(土)~12月8日(日) 会場:アーツ千代田3331(http://www.3331.jp/access/) 開場時間:12時~19時(金・土は20時まで)、火曜休場 参加アーティスト:石原七生・相良裕介・白井晴幸・砂川啓介・堀越達人・紫安恵太 [オープニング・レセプション] 11月2日(土) 17:00~ [トーク・イベント/ライヴ] 11月16日(土) 15:30~ アーティスト/トークホスト&コメンテータ/ミュージシャン=紫安恵太・砂川啓介×中村寛・海老塚万智・沢辺満智子・森啓輔×松谷冬太 11月30日(土) 15:30~ アーティスト/トークホスト&コメンテータ/ミュージシャン=石原七生・相良裕介・白井晴幸・堀越達人×中村寛・海老塚万智・沢辺満智子・森啓輔×中村公輔 [プロフィール] アーティスト ◯石原七生 NANAMI, Ishihara 1982年 東京生まれ 2008年 多摩美術大学造形学科造形表現学部卒業 はるか昔より日本の風土に刻まれ、日本人の遺伝子に刻まれているかのような物語に興味があります。古事記や土着信仰、伝え聞く昔話や洗練された物語である謡曲を自身の根源的記憶と現在感じていることを合わせ、新しく解釈して表現したいと考えています。 ◯相良裕介 SAGARA, Yusuke 1981年 東京生まれ 2006年 多摩美術大学造形表現学部油画コース卒業 2006年 多摩美術大学卒業制作優秀賞 2012年 千代田芸術祭アンデパンダン展スカラシップ 斎藤芽生賞 2013年 タグボートアートフェス審査員賞池内務賞 都市の地面を覆うアスファルト舗装をモチーフにし、「舗装する絵画」をコンセプトに平面作品を制作している。 ◯白井晴幸 SHIRAI, Haruyuki 2010年 多摩美術大学映像演劇学科卒 1981年 東京生まれ。 2012年 第6回 写真「1_wall」入選。 技法の創造からはじまる奇術的ユーモアと、幻像を寓意する写真哲学を指針としている。 http://www.shiraiharuyuki.com ◯砂川啓介 SUNAKAWA, Keisuke 1985年 広島県生まれ 2011年 多摩美術大学大学院美術研究科絵画学科修了 【一見≠凝視】 理解することとはどういったことなのだろう。見る事なのか、考えることなのか、、、または体感することなのか。知識、記憶の中にはいろんな矛盾が存在している。 知覚の違和感を通した現実と非現実を表したい。 ◯堀越達人 HORIKOSHI, Tatsuhito 2010年 多摩美術大学大学院美術研究科絵画学科修了 2012年 第5回アーティクル賞, ターナー色彩賞 2012年 「Illumination」 Gallery LVS / ソウル 2013年 「You are so cool!!!」 オオシマファインアート / 東京 2013年 「中之条ビエンナーレ」 群馬 ◯M&W from Miles Waters ◉Miles Waters アパレルブランド「Miles Waters」専属アーティスト Art unit〈M&W〉 紫安恵太・渡邉聡志によるアートユニット。アパレルブランド「Miles Waters」のアートワーク制作、ブランディングを担当する。独自の概念である「フラクタルキマイラ構造」を基軸にアーティストであるMiles Watersの思想を反影し、グラフィックデザインやファインアート作品のディレクション、発表を行う。 ・紫安恵太 MURAYASU, Keita 2012年 多摩美術大学 大学院修了     Chain Chamber&Co代表     アパレルブランド「Miles Waters」アートディレクター ・渡邉聡志 WATANABE, Satoshi 2012年 多摩美術大学 大学院修了     アパレルブランド「Miles Waters」アートディレクター トークホスト&コメンテータ ◯中村寛 NAKAMURA, Yutaka 多摩美術大学准教授/文化人類学者/人間学工房の呼びかけ人 アメリカおよび日本を当面のフィールドとして、「周縁」における暴力や社会的痛苦、差別と同化のメカニズム、コミュニケーションなどのテーマに取り組む一方、人間学工房を通じて文化運動にも取り組む。主要論文にCommunity in Crisis: Language and Action among African-American Muslims in Harlem(博士論文、2008年)、「現代アメリカ社会における暴力と言語を考える」(『インパクション』174、2010年)、「文化運動としてのハーレム・ライターズ・クルー――人類学とアートの結節点の探求のために」(『多摩美術大学研究紀要』、2013年)、「「アーカイヴへの不満――アフリカ系アメリカ人におけるアイデンティティをめぐる闘争」(『文化人類学』(78(2)、2013年)など。訳書に『アップタウン・キッズ――ニューヨーク・ハーレムの公営団地とストリート文化』(テリー・ウィリアムズ&ウィリアム・コーンブルム著、大月書店、2010年)。 (人間学工房ウェブサイト http://www.ningengakukobo.com/) (多摩美術大学ウェブサイト http://faculty.tamabi.ac.jp/html/ja/100000731.html) ◯海老塚万智 EBIZUKA, Machi 多摩美術大学大学院美術研究科・修士課程 芸術学/ル・クレジオ研究 フランス人作家J.M.G. ル・クレジオの小説群をひとつの伝記として読み解き、その人類学的視点の検討を研究テーマとする。フランス文学史において評価されてきた彼の作品の根底にある「文化を書く」ことに対する意識、新たな「民族誌」の可能性を探る。「旅と意識変容―ル・クレジオ作品に見る「沈黙」をめぐる考察―」(卒業論文、2012) ◯沢辺満智子 SAWABE, Machiko 一橋大学大学院社会学研究科・博士課程 文化人類学/養蚕・絹研究 日本を主要なフィールドとし、「養蚕」についての人類学的研究をテーマとしている。絹産業という近代産業を、人間の触覚、聴覚などの感覚的経験、またそれらに媒介された神話的想像力を起点として捉え返すことから、近代の再検討を試みる。近年は、イタリアもフィールドとしながら、養蚕を軸とした比較研究に取り組む。「育てる技術と地域コミュニティ—戦後群馬県の養蚕業から」(修士論文、2011)「繭に眠る女たち」(『石内都写真集 絹の夢』、青幻舎、2012) ◯森啓輔 MORI, Keisuke 一橋大学大学院社会学研究科・博士課程/社会学/戦後社会運動史/沖縄現代史 高校時代狭い沖縄がいやでドイツに飛び出し、でもそのおかげで結局沖縄を凝視したくなって現在に至る。学部生の時に、沖縄島の北にある東村高江という自然豊かな小さな集落に、新しい米軍基地建設計画が持ち上がった。2007年に高江住民がはじめた建設を止めるための座り込みに参加しつつ、フィールドワークを開始。生活する人々の豊かな生き様に魅力を感じ開始したフィールドワークは同時に、資本の不平等、軍隊や国家の暴力、差別など、地球上の全ての矛盾が、ドットのように小さな高江を貫いているのだと気づく。これからは高江を出発点としてドイツや日本本土の戦後の人々の営みに接続させて複雑な網の目を作っていきたい。目標は自己紹介をできなくなる次元に到達すること。最近は、占領期の沖縄島北部—日本—アメリカの関係性について考察中。主要論文に「非決定性空間の権力地図—沖縄県東村高江における米軍基地建設に反対する住民の座り込みを通して—」(修士論文、2011年)、「沖縄社会運動を 「聴く」 ことによる多元的ナショナリズム批判へ向けて―沖縄県東村高江の米軍ヘリパッド建設に反対する座り込みを事例に―」(『沖縄文化研究』、2013年)など。 ミュージシャン ◯松谷冬太 MATSUYA, Fuyuta シンガーソングライター 音楽家の両親のもと東京に生まれ、幼少よりバイオリン、クラシックギターに親しみ、10代後半にジャズピアニストの本田竹広に出会い多大な影響を受ける。80年代に渡米し、ニューヨークでヴォーカリストとして本格的に音楽活動を開始する。スタッフのベーシスト、ゴードン・エドワーズ、ジャズピアニストの菊池雅章と親交を深め、91年にはハーレムのアポロシアターへの出演を果たす。帰国後、数々のCM音楽に参加し、井上艦、矢野顕子と共演する。2002年よりアレンジャー天生目智とコラボレーションをスタートし、R&B、ブラジル音楽、ジャズに根差したロマンティックでエモーショナルな作品を生み出している(ミニアルバム『ミスティカル・レディー』より抜粋)。 2006年、ミニアルバム『ミスティカル・レディー』、2010年、ファーストアルバム『森のうた』発表。 (http://www.fuyuta.com/より) ◯中村公輔 NAKAMURA, Kousuke KangarooPaw/the Bootles/作曲家/ミキサー/ライター エレクトロニカ・ユニットneinaのメンバーとして1999年にドイツMille Plateauxよりアルバム「formed verse」をリリース。欧米で高い評価を受ける。 2000年に同メンバーによる別ユニット繭(maju)をオーストラリアExtreme Recordsより、ポストロック系ソロ・プロジェクトKangarooPawを自身のレーベル深海レコードよりリリース。 その後、リミキサー、アレンジャー、レコーディングエンジニアとして数多くの作品を手がける。主なアーティストは、toe、dill、Natural Punch Dranker、高畠俊太郎、三上ちさこ、フルカワミキ、服部祐民子、AUTO PILOT、REACH、Back Drop Bomb等。小谷元彦のヴェネチアビエンナーレ出展作「Rompers」のミックス等、音楽シーンに関わらず活動は多岐に渡る。 (http://plaza.harmonix.ne.jp/~koh-suke/about.htmlより) チラシ・DMデザイン ◯可児優 KANI, Suguru

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